善管注意義務違反。借りている部屋・設備はきちんと管理する、という意味です。

賃貸物件入居中、或いは退去時に問題になる事のひとつ。

善管注意義務違反。
というものがあります。

契約する時には、必ず説明を受けている筈の
善管注意義務。

これは、借りている人は部屋をきちんと管理する必要がある。
という意味合いです。

では、管理する、と言うのはどんな意味なのでしょうか。

賃貸期間中もちろんきちんと家賃を払っています。
特に問題を起こすわけではない。
でも、家賃を払っているのだから
部屋をどう使おうが勝手。
という訳ではありません。

借りている間は、普通に清掃をし
常識の範囲で通常利用をする。
もし、修理が必要と思われるような事があれば
早めに管理者、大家さんに連絡をしなければなりません。

部屋は、床・壁・天井・窓・トイレ・風呂・キッチン
など、室内すべてが、管理すべき対象になります。
専有部分の室内や設備として利用している物も
借りている物です。
だから、これらは管理者として
責任をもって管理しなければならないのです。

管理していなければ、当然【善管注意義務違反】となるのです。

善管注意義務違反が問題になるのは
大抵の場合、退去時です。

入居期間中、特に長期間入居されていた場合。
室内は当然に時間経過とともに汚れたり傷んだりします。
普通に室内の清掃をしたり、水回りを清掃する。
設備であるエアコンのフィルターを清掃する。

それは言ってみれば当たり前の事です。

それでも、年月が経てば
きれいだったクロスも黒ずみ、日焼けで色が変色します。
設備も経年により傷んできたりします。

もちろん、コーヒーをこぼして床にシミを作った。
壁に物をぶつけて穴をあけてしまった。
クロスや襖を破ってしまった
などは、経年劣化（年数を経たことによる傷み）や
普通に暮らしている間の汚れ（自然損耗）には
該当しないと判断できます。

このように、明らかに借主の故意や過失と思われれば、
善管注意義務違反と判断されるでしょう。

この通常清掃をして利用する。
と言う当たり前のような事、問題になる事があるのです。

いわゆる「ゴミ部屋」だったり、
部屋を掃除した事がないのでは？と思うような部屋です。

賃貸期間中は、何か故障など問題がない限り
こちらが室内に立ち入ることがありません。
そうすると、ゴミ部屋である事に気づきません。
何かのきっかけで、室内を見た時、
あまりにひどい状況に愕然とする。
という事があります。

ドアを開けた瞬間、ゴミが部屋中にあふれ
全く床が見えない。
キッチンやお風呂、トイレもゴミがうずたかく積まれています。
一体どこで生活しているのだろう。
と思うようなお部屋です。

このような状態の部屋は、たとえゴミを全て片付けたとしても
長期間放置されたゴミのせいで
床や壁、設備もすっかり傷んでしまいます。

臭いも抜けず、普通にクリーニングをしただけでは
きれいになりません。

このような状態にしてしまったら
当然【善管注意義務違反】になります。

ゴミ部屋とまでいかなくても
入居中、ほとんど掃除をしていなかった。
こんなお部屋も同じです。

カーテンレールの上には埃が１センチくらい積もっている。
換気扇は、油と埃で黒くなりベタベタ。
お風呂もカビとシミだらけ。
壁は汚れでシミだらけ。
そのような部屋は換気もされていない事が多く
壁がカビで黒くなっていたり
窓サッシもカビで黒くなっていたりします。

天井に蜘蛛の巣が張っているという事すらあります。

清掃されていなかったお部屋は、
通常クリーニングで落とすことは大変難しいのです。
そうするとクロスの貼替、場合によって床貼替も必要。

掃除した事のないであろうトイレ便器は
内部も見事に真っ黒になってしまいます。
これも通常清掃では落とせないレベルとなります。

このような状態であれば明らかに【善管注意義務違反】と考えられます。

退去時に問題となる室内の状況も
広い意味で善管注意義務違反と考えられます。

ここまで、ひどい状況でなくても
壁や収納内にシートを貼り付けてしまい、
剥がそうとすると、壁の一部が剥がれてしまう。
或いは、粘着テープが取れなくなってしまう。

突っ張り棒を使用していて、壁に穴をあけてしまう。
このような事も、退去時の原状回復として
借主に請求される事が考えられます。

その費用は、どこまで負担すべきか。
それについては、国土交通省等の発表している指針を参考に
負担割合が決まってくることがあります。

10年、20年と入居していた方でも
きちんと管理して頂いた方のお部屋は、
本当にきれいなままです。（経年による傷み以外）

それを考えると、長期間住んでいたのだから
汚くてもしょうがないでしょう。
と言う方の言葉は本当に説得力がありません。

住んでいる所は、ぴかぴかとまではいかなくても
最低限掃除をしたり壊さないように使う。

それが、退去時の費用もかからなくてすむ
大事な方法です。